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2025.06.20(Fri)

ペットボトル症候群に注意!スポーツ選手の正しい水分の取り方

患者さん
患者さん

急に暑くなって身体がしんどい
毎年暑さが更新されて身体がついていかない
今年もこの季節になってきた。熱中症に注意しなくちゃ!!

タカスポ
タカスポ

今年も暑い季節がやってきましたね。スポーツ選手はもちろん、スポーツをしない方でも熱中症の対策は必須になってきました。
熱中症対策については過去のコラムを参考にしてみてください。こちら→

タカスポ
タカスポ

暑い季節になると、のどが渇いてついつい冷たい飲み物を手に取りがちです。特にスポーツをされている方や学生さんは、水分補給にスポーツドリンクや清涼飲料水を頻繁に飲むことが多いのではないでしょうか?しかし、その手軽な甘い飲み物が、実はあなたの身体のだるさや不調の原因になっているかもしれません。今回は、【ペットボトル症候群】と【正しい水分摂取】についてお話ししたいと思います。

ペットボトル症候群に注意!あなたの身体は大丈夫?

 ペットボトル症候群とは?

ペットボトル症候群とは、正式には「清涼飲料水ケトーシス」や「ソフトドリンクケトーシス」と呼ばれる病気で、糖分を多く含む清涼飲料水(ジュース、スポーツドリンク、缶コーヒーなど)を大量に摂取し続けることによって、体内の血糖値が急激に上昇し、インスリンの作用が追いつかなくなることで引き起こされる病態です。

発症のメカニズム

  1. 糖分の過剰摂取

 大量の清涼飲料水を飲むことで、体内に大量の糖分が一気に流れ込みます。

  1. 血糖値の急上昇

血液中の糖分(ブドウ糖)濃度が急激に高まります。

  1. インスリンの負荷と機能低下

血糖値を下げるホルモンであるインスリンが大量に分泌されますが、あまりにも大量の糖分に対して膵臓が疲弊し、インスリンの分泌が追いつかなくなったり、インスリンが効きにくくなったりします(インスリン抵抗性)。

  1. エネルギー源の枯渇と脂肪分解

糖がうまく細胞に取り込まれてエネルギー源として利用できないため、体は代替エネルギー源として脂肪を分解し始めます。

  1. ケトン体の生成

脂肪が分解される際に、「ケトン体」と呼ばれる酸性物質(アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトン)が生成されます。

  1. 血液の酸性化(ケトーシス・ケトアシドーシス)

ケトン体が血液中に大量に蓄積されると、血液が酸性に傾きます。この状態を「ケトーシス」と呼び、さらに悪化して意識障害などを引き起こすほど重症化した場合は「ケトアシドーシス」と呼ばれます。

  1. 悪循環

高血糖状態が続くと、喉の渇きを感じ、さらに清涼飲料水を飲んでしまうという悪循環に陥り、症状が急速に悪化することがあります。

主な症状

清涼飲料水ケトーシスで現れる症状は、糖尿病と似ていますが、急激に悪化するのが特徴です。

著しい喉の渇き(口渇)
高血糖により血液の浸透圧が高まり、身体が水分を欲します。
多尿・頻尿
体内の余分な糖分を尿として排出しようとするため、尿の量が増え、頻繁にトイレに行くようになります。
強い倦怠感・疲労感
糖がエネルギーとして利用されにくくなるため、全身がだるく、疲れやすくなります。
体重の減少
エネルギー源として脂肪が分解されるため、体重が減少することがあります。
吐き気・嘔吐・腹痛
ケトン体の増加が胃腸に影響を及ぼすことがあります。
集中力の低下、イライラ
血糖値の急激な変動が脳の働きに影響を与え、精神的な不調を引き起こすことがあります。
呼吸困難、速くて深い呼吸(クスマウル大呼吸)
ケトアシドーシスが進行すると現れることがあります。
意識障害・昏睡
重症化すると、血液の酸性化が脳に影響を与え、意識が朦朧としたり、昏睡状態に陥ったりすることがあります。命に関わる危険な状態です。

発症しやすい人

  • 10代~30代の比較的若い男性に多く見られる傾向があります。
  • 普段から清涼飲料水を日常的に多飲している人。
  • 糖尿病の自覚がないまま、喉の渇きを潤すためにさらに清涼飲料水を飲んでしまう人。
  • 熱中症対策として、糖分の多いスポーツドリンクを過剰に摂取する人。

スポーツ選手・ジュニア選手のための「正しい水分の取り方」

パフォーマンスを左右する水分補給

スポーツをするうえで、パフォーマンスを左右する大きな要因のひとつが水分補給です。

特に成長期のジュニアアスリートにとって、正しい水分の取り方を知らないと、熱中症のリスクやパフォーマンス低下、回復の遅れなどにつながる可能性があります。涼飲料水ケトーシスを予防するための正しい水分摂取方法は、「何を」「いつ」「どのくらい」飲むかが非常に重要です。清涼飲料水ケトーシスは、糖分の過剰摂取が根本原因であるため、特に飲み物の選択に注意が必要です。スポーツ選手やジュニア選手が清涼飲料水ケトーシスを予防し、特に運動量が多いアスリートは、水分と電解質を適切に補給する必要がありますが、その際に糖分の過剰摂取に陥らないよう注意が必要です。

何を飲むべきか(飲み物の選択)

水(水道水、ミネラルウォーター)

 最も基本的な水分補給源です。糖分やカフェイン、その他の添加物が含まれていないため、日常的な水分補給に最適です。

麦茶・ほうじ茶・ルイボスティーなどのノンカフェインのお茶

 カフェインには利尿作用があり、体内の水分排出を促してしまうため、水分補給にはノンカフェインのお茶が適しています。

白湯(さゆ)

 常温または温かい白湯は、胃腸への負担も少なく、身体を冷やさないためおすすめです。

スポーツドリンク

大量の汗をかく激しい運動時や、発熱などで脱水状態にある場合に限り、電解質と糖分の補給として適量を摂取します。

経口補水液

経口補水液は、スポーツドリンクよりも電解質濃度が高く、糖分が少ないため、素早い水分・電解質補給に適しています。

いつ飲むべきか(タイミング)

喉の渇きを感じてからでは遅い場合が多いです。喉が渇く前に、計画的に水分を摂取する「ウォーターローディング」の考え方が重要です。

日常生活・軽い運動時
水、麦茶、ほうじ茶などの無糖のお茶が最適です。こまめに(少量ずつ頻繁に)水分を摂る習慣をつけましょう。
運動前
通常の食事をしっかり摂っている場合は、水でも十分です。運動前のエネルギー補給も兼ねたい場合や、ミネラル(塩分)も摂りたい場合は、体液とほぼ同じ浸透圧のアイソトニック飲料(スポーツドリンク)がおすすめです。糖質濃度は4〜6%程度が一般的で、運動前のエネルギー源としても有効です。
適しています。
運動中(特に長時間、高強度、高温環境下での運動)
ハイポトニック飲料(スポーツドリンク)は汗で失われた水分と電解質(ナトリウムなど)を補給し、パフォーマンスの低下と熱中症を予防します。体液よりも浸透圧が低い(薄い)飲料で、水分が胃から小腸へ素早く移動し、吸収されやすいのが特徴です。糖質濃度が低めに設定されているため、清涼飲料水ケトーシスのリスクも低減できます。ナトリウム濃度は100mlあたり40〜80mg(塩分濃度0.1〜0.2%)が推奨されています。特に脱水症状が疑われる場合や、激しい発汗を伴う場合は、電解質と糖質のバランスが良い経口補水液も有効です。
運動後
運動で失われた水分とエネルギー源を速やかに補給し、身体の回復を促します。 運動によって減少した体重を目標に、水分を補給します。運動前後の体重を測る習慣をつけ、失われた水分量(体重減少量)の1.5倍を目安に補給すると良いとされています。スポーツドリンク(アイソトニック飲料)は水分、電解質、糖質をバランス良く補給できます。牛乳・豆乳やアミノ酸飲料もタンパク質も同時に摂取できるため、筋肉の修復にも役立ちます。

どのくらい飲むべきか(量)

成人の場合、食事以外で1日あたり1.2〜1.5リットル程度の水分摂取が推奨されています。これはあくまで目安であり、活動量や気温、体調によって調整が必要です。一度に大量に飲むと身体への負担が大きくなったり、吸収しきれずに排出されてしまったりすることがあります。コップ1杯(180〜250ml)程度を、1日を通して少しずつこまめに数回に分けて飲むのが理想です。基本的には常温の飲み物が胃腸に負担をかけず、身体に優しいとされています。熱中症などで体が熱い場合は冷たい飲み物も有効ですが、冷えすぎには注意しましょう。

体重測定による水分管理

運動の前後で体重を測定し、失われた水分量を把握することで、適切な水分補給量を計算できます(運動前体重 - 運動後体重 = 損失水分量)。失われた体重の1.5倍程度の水分を補給するのが目安とされています。

運動前

 運動を始める30分前までに250〜500ml程度の水を飲んでおくのが目安です。試合や練習の4時間前に体重1kgあたり5〜7mLの水分摂取、その後排尿がない、または尿の色が濃い場合は2時間前にさらに体重1kgあたり3〜5mL摂取とされています。

運動中

運動中は15〜30分ごとにコップ一杯程度(150〜250ml)を目安に、こまめに摂取しましょう。長時間の運動では、1時間あたり500〜1,000mlを目安に補給します。喉が渇く前に、意識的に水分補給を行いましょう。

運動後

運動で失われた水分を補うために、運動前後の体重変化の1.25〜1.5倍の水分を2〜4時間かけて摂ることが重要です。体重が60kgの選手が1kg減った場合、1.25〜1.5Lの水分補給が目安となります。

体調管理と自己モニタリング

身体の変化を確認しましょう!

運動前後の体重測定

最も簡単な水分摂取量のチェック方法です。体重減少が2%を超えないように水分を補給しましょう。

尿の色チェック

尿の色が濃い黄色〜茶色の場合、脱水の可能性があります。透明に近い薄い黄色が理想です。

口渇感

口の渇きは、すでに脱水が始まっているサインです。喉が渇く前に補給する意識が大切です。

体調の変化に注意

倦怠感、集中力の低下、イライラ、頭痛など、清涼飲料水ケトーシスや熱中症の初期症状に注意し、異変を感じたらすぐに休息と水分補給、必要であれば医療機関を受診しましょう。

ジュニア選手への指導のポイント

ジュニア選手は、身体の成長段階であり、体温調節機能も未熟な場合があります。また、習慣や知識が大人ほど備わっていないため、保護者や指導者の役割が非常に重要です。

具体的な指導

ジュニア選手は自分で水分摂取の管理が難しい場合があります。保護者や指導者が、適切な飲み物の準備や声かけを積極的に行う必要があります。具体的な量を提示し、「休憩ごとに必ず飲む」「喉が渇いていなくても飲む」といった習慣づけを促しましょう。

飲み物の選択肢の提供

水筒に水やお茶、練習内容によってはスポーツドリンクを用意するなど、適切な飲み物をいつでも飲める環境を整えましょう。甘いジュースを「頑張ったご褒美」として与える習慣は、清涼飲料水ケトーシスのリスクを高める可能性があります。

糖分のリスクを説明

なぜ清涼飲料水の飲みすぎが良くないのかを、分かりやすく伝えることも大切です。練習や試合の前に、適切な量の水やスポーツドリンクが入っているか確認しましょう。

これらの正しい水分摂取方法を実践することで、ジュニア選手は清涼飲料水ケトーシスを予防し、最高のパフォーマンスを発揮できる健康な身体を維持することができます。

まとめ

スポーツ選手やジュニア選手にとって、水分補給はパフォーマンス向上と健康維持の要です。水分補給の仕方一つで、身体のバランスが崩れることもあるため、ぜひ「何を・いつ・どのくらい飲んでいるか」にも意識を向けてみてください。清涼飲料水ケトーシスを予防するためには、普段は水やお茶を基本とし、運動の強度や時間、環境に応じて適切なスポーツドリンクを選び、こまめに摂取することが重要です。正しい知識を持って、安全で効果的な水分補給を実践しましょう。

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