前回のコラムでも書いたように近年、運動不足や生活習慣の変化に伴い、子どもの足の健康問題が深刻化しており、足育の重要性が再認識されています。今回は足育の実践方法についてお話ししていきます。
足育は、子どもの健康な成長をサポートするための重要な取り組みです。専門的な知識と技術に基づいた指導を行うことで、より効果的な足育が実現します。
足育の実践方法
裸足で遊ぶ
裸足で遊ぶことで足裏の感覚(メカノレセプター)が研ぎ澄まされ、バランス感覚や空間認識能力が向上します。さらに足裏の筋肉が鍛えられ、足のアーチが形成されやすくなることで扁平足の予防や姿勢制御能力の向上、運動能力の向上に効果があります。また、感覚器から脳への刺激が増え、脳の発達を促します。
【メカノレセプターとは?】
足裏の感覚器官(メカノレセプター)は、人体における感覚受容系の重要な構成要素で、特に体性感覚の中でも重要な役割を担っています。
メカノレセプターとは、機械的な刺激を感知する感覚受容器のことです。私たちの身体には様々な場所に存在しますが、特に足裏には豊富に分布しており、地面の硬さ、温度、傾きなど、様々な情報を脳に伝えています。
裸足で地面を歩くことで、足裏のメカノレセプターが様々な刺激を受け、活発に活動します。活性化したメカノレセプターは、得られた情報を脳へ伝達し、脳はそれらの情報を処理することで、体のバランス感覚や協調性を高めます。脳への情報伝達が活発になることで、神経系がより発達し、運動能力の向上にも繋がります。
適切な靴を選ぶ
足の形状やサイズに合った履物を選択することが重要です。選ぶ際には足指が自由に動かせ、圧迫感のないもので、かかとがしっかり固定され、足が靴の中で安定するものが理想です。素材も柔らかく、通気性の良いものを選びましょう。
【適切な靴を履いてない子供が多い?】
日本学校保健会(2009)が実施した児童生徒を対象とした足の計測及び足に関するアンケート(複数回答)の報告では、外反母趾、内反小趾、爪の痛み、まめ・靴ずれ、踵痛・膝痛等の足のトラブルを経験したことがある子どもは 43%と約半数に及ぶことがわかりました。小児期では足の成長に合わせて大きめの靴を選ぶ傾向がありますが、サイズや形状のあっていない靴が足のトラブルの原因となることが多く注意が必要です。
日本人の足は甲高幅広(甲が高く幅が広い)だといわれますが、実際は欧米人と比べて幅は広めだが、幅広といえる人はそう多くありません。(甲はむしろ低いタイプが大半です。)
JIS規格では3E以上が幅広ですが、日本人はそれより幅が狭いシングルEから2Eが平均的です。実際より幅広の靴だと足が内部で動くため、疲れやすくなり、足トラブルの引き金にもなります。サイズやワイズ(幅)を測定できない場合はシューズの中敷きに足を置いてサイズをチェックしてみましょう。また、試し履きをする際は立ち上がったり、歩いてみてダイナミック(動的)なサイズでフィットさせることも重要です。靴ひもを結ばない(ゆるゆる)のもシューズの機能を損ない、足への負担を増大させるので結び直すようにしましょう。
足趾運動・姿勢・歩行指導
【足指運動を取り入れ、歩き方や姿勢を正しましょう】
足指の筋力強化や足部アーチ形成の促進のために足指を曲げ伸ばしする運動やタオルを足指で掴む運動など、足指を意識的に動かす運動を取り入れましょう。歩幅を広くしてかかとからつま先へ体重を移動させることを意識して歩くことで、足の筋肉がバランスよく鍛えられます。猫背や反り腰など、姿勢が悪いと足への負担が増えてしまいます。姿勢を正すことで、足のトラブルを予防し、全身のバランスを整えることができます。
インソール療法
個々の足の形状に合わせ、足部機能の改善を目的として用いられるオーソティックスは特に小児期においては、足の成長発達に伴う様々な問題に対して、有効な治療手段です。成長痛や小児疾患は足部や身体の成長に合わせて治療を継続的に行うため、長期的な視点での治療が必要となるため定期的な健診や調整を行います。
当院のオーソティックスは足部をニュートラル(理想的な位置)に整えるとともに、歩行時の理想的な運動を促します。詳しくはこちら
まとめ
足育が目指す未来
足育は、単に子どもの足を育てるだけでなく、心身ともに健やかな子どもを育てるための重要な取り組みです。足のトラブルを予防し、子どもの健康な成長をサポートするとともにスポーツパフォーマンスの向上や、生涯にわたって運動を楽しむための基盤を築きます。
今後、さらなる研究の進展と多様な分野との連携を通じて、足育はより科学的根拠に基づいた実践となり、社会全体に広がっていくことが期待されます。