
ランニングを始めてから膝の外側に痛みが出る
5キロまでは痛くなかったがそれ以上走ると膝の痛みで走れなくなる
運動後に痛みが出始め、安静にしていると痛みが消える

このような症状を抱えている方は【腸脛靭帯炎】かもしれません。
腸脛靭帯炎はランナーズニーと呼ばれ、ランニングによって膝の外側に痛みが生じるもので、特に腸脛靭帯(太ももの外側にある靭帯)が膝の外側の骨と擦れることで炎症を起こす障害です。特に長距離を走るランナーに多く見られ、走り続けると痛みが徐々に強くなり、症状が進行すると、歩行時や階段の昇降時、さらには安静時にも膝の外側に痛みを感じるようになり最終的には走れなくなることもあります。

足部の異常が下肢全体のバランスを崩すことが原因となることも多く、症状の改善に足部からのアプローチであるインソール療法は非常に効果的です。
今回の足から診る痛み・障害は【腸脛靭帯炎】についてお話ししていきます。
足から診る腸脛靭帯炎
ランナーズニー(腸脛靭帯炎)は、ランニングなどによる膝の使いすぎ(オーバーユース)が主な原因で、膝の外側に痛みが生じるスポーツ障害です。太ももの外側にある長い靭帯である「腸脛靭帯」が、膝の曲げ伸ばしを繰り返す際に、大腿骨の外側にある骨の出っ張り(大腿骨外側上顆)と擦れ合い、摩擦が起こることで炎症が生じます。

病態や原因や治療法についてはこちらを参考にしてください
足から診る腸脛靭帯炎の原因
オーバープロネーションは腸脛靭帯炎に深く関係する
オーバープロネーションとは、足関節が歩行時に過度に内側に倒れ込む状態を指します。この状態は足部の機能不全から始まり、脛骨のねじれや膝のニーインといった連鎖的な動きを引き起こします。この一連の動きが腸脛靭帯に過剰な摩擦と伸張ストレスを与え、ランナーズニーの発症リスクを高める主要な要因となります。

【脛骨の内旋に伴う膝の捻れ】
オーバープロネーションによって、足が内側に倒れ込むと、脛骨(すねの骨)が内側に過度に回転し、それに伴って膝も内側にねじれる傾向があります。このねじれが腸脛靭帯に不要な摩擦を生じさせ、炎症を引き起こします。
【下肢全体のバランスの崩れ】
足部が内側に倒れこむことで、足首、膝、股関節さらには骨盤や体幹まで下肢全体の骨格配列に歪みが生じ、特定の筋肉や靭帯に過剰な負担がかかります。また特定の筋肉(特に臀筋群)の筋力不足や柔軟性の低下と組み合わさることで、さらに腸脛靭帯へのストレスが増加します。
【衝撃の吸収低下】
足部のアーチは衝撃吸収の役割を担っていますが、オーバープロネーションによってアーチが適切に機能しないと、着地時の衝撃が膝に直接伝わりやすくなり腸脛靭帯への負担を増大させる要因となります。
ランニングフォームに注意が必要!
【なぜランニングフォームが重要なのか?】
腸脛靭帯炎は、腸脛靭帯が大腿骨の突出部と過度に摩擦することで炎症を起こします。この「過度な摩擦」は、多くの場合、不適切なランニングフォームが引き起こす下肢のねじれや不安定性が原因となっています。
注意が必要!!
- ランニング中に、着地した側の膝が内側に入る→ニーイン
- 歩幅が広く身体の重心よりはるか前方に足を着地させる→ブレーキになってしまう
- 1分間あたりの足の回転数(ケイデンス)が低い→一歩あたりの地面との接地時間が長くなり、膝への衝撃が大きくなる
- 体幹が左右に大きく揺れたり、骨盤が不安定に傾いたりする→膝のねじれや不必要なストレスが生じやすくなる
- 着地時につま先が過度に外を向く→特に、ニーインと組み合わさった「ニーイン・トウアウト」は膝に大きな負担をかける
- ランニング中に身体の重心が大きく上下に揺れる→着地時に地面から受ける衝撃も大きくなり腸脛靭帯への負担が増加する
- 足が地面に着地する際に、「ドン」「バタバタ」と大きな音がする→着地時に衝撃を適切に吸収できていないことを示し、腸脛靭帯に負担をかける
【ランニングフォームが重要】
腸脛靭帯炎(ランナーズニー)を根本的に治す、あるいは再発を防ぐ上で、ランニングフォームの改善は非常に重要な要素となります。ランニングは全身運動であり、足部、足関節、膝、股関節、骨盤、体幹が連動して動きます。フォームが悪いと、この連動性が損なわれ、特定の部位(腸脛靭帯)に負担が集中します。正しいフォームを習得することで、下肢全体の筋肉や関節が効率的に働き、衝撃を適切に分散できるようになります。インソール療法は、足部の矯正や症状緩和や予防に効果が期待できます。さらにフォームの改善には、それを支えるための筋力が必要です。特に、お尻の筋肉(中殿筋など)、体幹、ハムストリングス、足底の筋肉などを強化するトレーニングを並行して行うことが重要です。
足から診る腸脛靭帯炎のメカニズム
【腸脛靭帯への過剰な摩擦】
腸脛靭帯は、骨盤の外側(大殿筋や大腿筋膜張筋と連続しています)から太ももの外側を通り、膝の外側(脛骨の外側)に付着する強靭な靭帯です。膝を曲げ伸ばしする際、腸脛靭帯は大腿骨の外側にある骨の出っ張り(大腿骨外側上顆)の上を滑走します。オーバープロネーションにより、脛骨が内側にねじれ、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆との間で繰り返される過度な摩擦が最終的に腸脛靭帯の炎症を引き起こします。

【腸脛靭帯の伸張ストレス】
オーバープロネーションによって膝が内旋することで腸脛靭帯が不自然に引き伸ばされる形になります。この伸長ストレスが靭帯そのものに負荷をかけ、微細な損傷や炎症の原因となります。

【アーチ低下による衝撃吸収の低下】
足部のアーチはランニング時の衝撃を吸収する天然のショックアブソーバーですが、オーバープロネーションによってこれが潰れてしまうと、着地時の衝撃が効率的に吸収されず、ダイレクトに膝関節や腸脛靭帯に伝わり炎症を悪化させます。

足から診る腸脛靭帯の症例



まとめ
メカニズムを理解することで、腸脛靭帯炎の治療や予防において、足部の問題(オーバープロネーション)に対処することの重要性が明確になります。適切なシューズやインソールの使用、足部の筋力強化、そしてランニングフォームの改善が、根本的な解決に繋がります。
インソール療法の効果
- オーバープロネーションの抑制と足部の安定化
- 膝の捻れ(ニーイン)の軽減
- 衝撃吸収と圧力分散
- ランニングフォームの改善
当院ではインソール療法を積極的に行っています。ぜひご相談ください。