
「ケガしたけど試合にはどうしても出たい!」
「どのテーピングを選べばいいの?」
「どう貼れば効果があるの?」

今回は、テーピングの種類や効果、そして最新の研究動向を交えながら、あなたのスポーツライフをサポートする【スポーツテーピングの基礎知識】を徹底解説します。
テーピングの種類を知ろう
テーピングの歴史
現代のスポーツテーピングが本格的に発展したのは、20世紀初頭、主に非伸縮性のホワイトテープを用いて、足首の捻挫など、ケガをした関節を固定し、再発を防ぐ現在の固定用テーピングの基礎ができました。1970年代に、日本の柔道整復師によって、画期的なテーピング方法が開発されました。従来の固定目的のテープとは異なり、筋肉と同じ伸縮性を持つ素材を使った「キネシオロジーテーピング」です。キネシオロジーテーピングは、2008年の北京オリンピックで、多くのアスリートが使用している姿がテレビで放映されたことにより、世界的な知名度を獲得しました。そこから、より進化した素材(ファイバー系など)が開発され、現在に至っています。
【3つの主要タイプ】
固定用テーピング(非伸縮性)
一般的にホワイトテープと呼ばれ、その名の通り伸縮性がなく、非常に丈夫です。主に関節の固定・可動域制限を目的とし、足首の捻挫や指の突き指など、ケガをした関節の動きを強力に制限し、再発を防ぎます。

圧迫・固定用テーピング(伸縮性)
このタイプは非伸縮性テープほどの固定力はありませんが、適度な圧迫とサポートを与えます。 伸び縮みするため、筋肉や関節の動きを完全に制限せず、筋肉の動きに沿ってテープが伸びるため、動きを妨げにくいのが特徴です。関節を適度に安定させながら、運動中の衝撃から保護する弾性包帯(エラスティックバンテージ)や自着性テープが代表的です。

筋肉サポート用テーピング(伸縮性)
主にキネシオロジーテープと呼ばれ、スポーツ現場でもよく見かけるテープです。伸縮性があり、人間の筋肉に近い伸縮率を持ち、筋肉のサポートや疲労の軽減、血行促進に効果があります。筋肉に合わせて貼ることで、筋肉の働きを助け、皮膚と筋肉の間に隙間を作り血行やリンパの流れを良くすることでパフォーマンスの維持や疲労の軽減を目的とします。

【3つの主要な目的】
スポーツテーピングは、単に「巻く」という行為ではなく、「守る」「高める」「治す」という3つの目的があり、それぞれ異なる役割を担っています。
「守る」 ケガの予防と応急処置 これはテーピングの最も基本的な役割です。スポーツ中に起こりうるケガのリスクを減らし、万が一の際の悪化を防ぎます。 筋肉や靭帯をテープで補強することで、外部からの衝撃やストレスを軽減し、ケガを未然に防ぎます。また、打撲や捻挫などのケガをした直後、患部をテープで圧迫し、内出血や腫れを最小限に抑える応急処置(RICE処置)に活用されます。 |
「高める」パフォーマンスの向上 テーピングは、アスリートが本来持っている力を最大限に引き出すためのツールとしても使用されます。 筋肉の走行に沿ってテーピングを貼ることで、筋肉の機能をサポートし、パフォーマンスの維持・向上をさせる効果があります。また、骨盤や姿勢の歪みを調整したり、血流を改善することで身体のバランス調整や疲労回復にも効果を発揮します。 |
「治す」痛みの緩和と機能回復 スポーツによる慢性的な痛みや、ケガからのリハビリテーション過程でもテーピングは重要な役割を果たします。痛みの信号を脳に伝える神経経路をブロックし、痛みを軽減したり、特定の筋肉や関節の動きを脳がより正確に認識できるようになり不自然な体の使い方を修正し、痛みの原因となっている動作パターンを改善することができます。 |
テーピング効果の科学的根拠:なぜ「貼るだけ」で効くのか?
「テープを貼るだけで本当に効果があるの?」そう疑問に思う方もいるかもしれません。テーピングの効果は、単なる固定やプラセボ効果だけではありません。最新の研究では、その効果の背後にある「神経学的メカニズム」が徐々に明らかになっています。
痛みをブロックする「ゲートコントロール理論」 テーピングが痛みを和らげるメカニズムとして最も広く知られているのが「ゲートコントロール理論」です。 私たちの身体には、痛みの信号を脳に伝える神経経路と、触覚や圧覚といった痛みを伴わない感覚を伝える神経経路があります。痛みを伴わない感覚神経は、痛みの神経よりも速く、脳に信号を伝達します。テーピングを貼ることで、皮膚に継続的な弱い刺激(触覚や圧覚)が加わり、痛みの信号が脳に伝わる「ゲート」を閉じる働きをします。これにより、痛みの信号が脳に届きにくくなり、結果として痛みが軽減されるのです。 この理論は、湿布を貼ることで痛みが和らぐ感覚にも似ています。テーピングは、この効果を物理的な刺激によって引き出すのです。 |
身体のバランス感覚を高める「固有受容感覚」 テーピングのもう一つの重要な科学的根拠は、「固有受容感覚(プロプリオセプション)」への働きかけです。 固有受容感覚とは、目で見なくても、自分の身体の関節がどの位置にあり、どのくらい動いているかを認識できる能力のことです。筋肉や関節にある「固有受容器」が、この情報を脳に送っています。テーピングを貼ることで、皮膚や筋肉の固有受容器が刺激され、その部位の動きや位置に関する情報が、より正確かつ迅速に脳に伝わるようになります。 例えば、足首にテーピングを貼ると、足首が不安定な状態にあることを脳が即座に察知し、無意識のうちに安定した状態に戻そうとします。これにより、バランス能力が向上し、転倒やねんざの予防につながります。また、正しい動きを促す「フィードバック」の役割も果たし、フォームの改善や、ケガからのリハビリテーションにおいて非常に効果的です。 |
血行促進と筋機能への影響 キネシオロジーテーピングに代表される伸縮性のあるテープは、皮膚を持ち上げることで、物理的に血行やリンパの流れを改善します。 テープを貼ることで、皮膚と筋肉の間にわずかな空間が生まれます。その部位の血行が促進されることで、筋肉への酸素や栄養の供給が円滑になり、疲労物質の排出も促されます。これにより、疲労回復が早まり、筋肉のコンディションを良好に保つことができます。また、テーピングを筋肉の走行に沿って貼ることで、筋肉の収縮をサポートし、筋出力を高める効果も一部の研究で示唆されています。 |
【目的別テーピング活用術】
目的 | おすすめのテーピング | 理由と具体的な使い方 |
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ケガの予防 (ねんざ、突き指) | 固定用非伸縮テープ | 関節の動きを物理的に制限し、不自然な動きによるケガを防ぎます。特に、過去にねんざをしたことがある足首には有効です。関節を固定するように巻き付けます。 |
筋肉の疲労軽減 (ランニング、球技) | キネシオロジーテープ | 筋肉の動きに沿って伸縮し、筋肉の働きをサポートします。これにより、疲労の蓄積を遅らせ、長時間の運動でもパフォーマンスを維持しやすくなります。太ももやふくらはぎの筋肉に沿って貼ります。 |
応急処置 (打撲、ねんざ直後) | 固定用伸縮テープ | 適度な圧迫を加えることで、患部の腫れや内出血を最小限に抑えます。患部全体を覆うように巻き付けます。 |
パフォーマンス向上 (姿勢やフォーム改善) | キネシオロジーテープ | 身体のバランス感覚を高める神経学的アプローチが期待できます。不自然な動きを脳にフィードバックし、正しいフォームへと導きます。痛みのない部位にも貼ることがあります。 |
痛みの緩和 (慢性的な痛み) | キネシオロジーテープ | 皮膚に与える弱い刺激が、痛みの信号を脳に伝える神経経路をブロックします。痛みの部位だけでなく、関連する筋肉やツボにも貼ることで、効果を高めます。 |
水中競技や高強度の運動 | ファイバー系テーピング | 合成繊維でできており、強い伸縮性で強度の高いスポーツ時のサポートで使用されます。高い撥水性と耐久性があるため汗や水に強く、剥がれにくいので、水泳やトライアスロンでも安心して使用できます。 |